練習会 2015 第5回報告

日時:
2015年10月4日(日) 10:00-15:30
テレイン:
五輪樹2014 (札幌市南区真駒内)
コースセッター:
宮川
参加者:
金田、山崎、岡本(将志)、泉、岡本(仁志)、林、柏木、川本、島松、法覚 (敬称略)
メニュー:
コース設定 (サーキットトレーニング)

オリエンテーリングは与えられたコースを回ってくるだけでは速くなれません。自分がコースセッターになってコースを創る(図上だけでなく実際に設置する)ことが必要です。
一つにはコースを組める人が増えることにより練習機会を増やせます。そしてなによりもオリエンテーリングの技術力を磨く練習になります。具体的にはプランニングとナビゲーションです。

図上でのコースプランニング
地図を読んで取るべきルートを決めるのがコースプランニングです。与えられたコースならばレッグの始点と終点は固定ですが、自分で組むとなると選択肢はとたんに膨れ上がります。
"コントロールを見つけ易い/見つけ難い"というコントロール単体での難易度よりも、"ベストルートが複数ある"というルートチョイスの多様性を重視するのが良いコースを作るコツです。森の中でポツンと孤立した小凹地よりも、ルートが3つ見えてどれが速いか判断がつかない道の分岐の方が良いです。
レッグの始点と終点を少しずつ変えながらルートの可能性を探ること、その考えを自分より速い人にぶつけてみる事は地図読みの良い練習になります。
ナビゲーション能力 (地形と地図の照合)
地図を読んで現地の景色(起伏/植生)をイメージできる事、現地の景色を見て等高線/通行可能度に直せることがナビゲーション能力の要点です。
これは場数を踏み経験を積むことで養われますが、全力で走ってばかりでは身に付きません。ゆっくりと歩き、ときには立ち止まりながら地図と景色を見比べることで経験値が貯まります。普段の練習ではコントロール撤収が、そして(何時でも出来る訳ではありませんが)地図調査もナビゲーション能力を磨く良い機会です。
コントロール撤収では自分のナビゲーションに自信が無くてもコントロールを見つけることで「正解」が分かります。しかし設置では「正解」の位置は示されていません。自分の持っているテクニックの全てを使って「正解」を見つけ出さなければなりません。さらには、地図が不正確で「正解」無し!!という判断になる場合もあります(急遽コントロール位置を変えなければなりません)。ハードルの上がった緊張感を持った練習になります。

今回はコースを考え、設置し、走る、という練習をおこないました。さらにコース設定をサポートし地図を印刷するソフトウェアの説明も併せておこないました。
具体的には以下の内容です。

  1. OCADによるコース作成・地図印刷手順のデモ
  2. 2グループに分かれて、ショートコース(〜1.5km)の案を作成
  3. 実際にフラッグを設置。現地の状況に応じてコース修正
  4. 作成したコースでサーキットトレーニング
  5. コース作成用フリーソフトの紹介

1. コース作成・地図印刷手順デモ

オリエンテーリングでもっとも一般的なソフトウェアOCADの説明をしました。 OCADでは"新規作成"すると、地図を作成するか?コース図を描くか?を尋ねられます。コース図作成を選ぶとメニュー及びアイコンがコース作成に特化した設定になります。作業は大まかに以下の流れです。

(1) 下絵地図読込み
使用する地図ファイルを読み込みます。OCADファイル形式(.OCD)だけでなく、JPEG・Bitmap等の画像ファイルも使えます。
(2) コントロール位置指定
○・△・◎などのアイコンを使って、全ポスト図を作る感じでコントロール位置を指定します。位置説明も併せて入力します。また位置説明を表示する場所も指定します。
(3) コース作成
コースの名前をつけて作成を始めます。スタートから順に作成済みのコントロールを選んでいきます。プレビューボタンを押すと印刷時と同じ状態で表示されます。
(4) 印刷
地図の範囲と用紙の印刷範囲を合わせて印刷します。

2. ショートコース案作成

今回は経験も考慮して2グループに分け、グループ毎にコース案を作成してもらいました。コース距離・レイアウトの目安として1.5kmのコース原案を各自に配布しました。

3. フラッグ設置・コース修正

コントロールを設置する時は、周辺の特徴物との相対関係がいちばん重要です。
ランナーはコントロールだけを目指して走るのではなく、周辺の特徴物を見つけてそこからコントロールを狙います(アタックポイント)。想定できる全てのアタックポイントとの相対関係を実際に歩いて確認しましょう。歩測&コンパス直進の良い練習にもなります。

地図上でコース案を作成しても、現地に行くと「ここには置けないな!」となることがあります。"地図に無い道/オープンがある"から"ここで正しいか自信がない"まで程度は様々ですが、根本の原因は『地図の表現が現地と合致していない』です。
自分のテクニックの限界を超えた位置(要は行けそうもない所)にコントロールを設定しませんから「ここで正しいか自信がない」ということは、あなたのナビゲーション能力が警報を発している訳です。「まぁ、いいや」と気付かないフリをして済まさずに解決を試みましょう。

正攻法の対応としては、コントロールはそのままで地図を修正することになります。
"地図の修正"といっても大仰に考えて尻込みする必要はありません。地図ファイルのコピーを保存しておけばやり直しはいくらでも出来ます。修正は上空から見下ろした正確な形よりも、ランナーの目線で見た景色を優先させましょう。「この沢はもう少し大きい」、「ヤブがこの辺まで広がっている」といった感じです。

ソフトウェアが無いため地図を修正できない、点状特徴物が消えてしまった等でコントロール位置を修正せざるをえない場合もあります。
コース案作成の段階でボツにした第2案・第3案があるならば、それを使えないか検討しましょう。代替案だと大きく位置が変わってルートの選択肢が無くなってしまうので、位置をあまり変えたくない時もあります。その場合は、より大きくてハッキリとした線状特徴物(道/尾根/沢)を選びましょう。

コース設定終了後にOCADでコース図を作成し、印刷・配布しました。
今回作成してもらったコースは以下のとおりです。一箇所、同じ位置だったので急遽変更したようです。コースbコースC

4. サーキットトレーニング

他チームのコース、自チームのコースの順で走ってもらいました。
パンチ台は使わず、タイム計測はしていません。

5. コース作成用フリーソフト紹介

最後にオリエンテーリングのコース図作成専用のオープンソースソフトウェア"Purple Pen"を紹介しました。当日紹介したのはVer. 2.3.2でしたが、ここから最新版をダウンロード出来ます。
このソフトはOCADコース設定機能と同等の作業が出来ます。ヘルプマニュアルが日本語化されており、操作手順は判りやすいです。
下絵地図はOCAD形式(Ver. 8~11)の地図データを読み込みます。

実際に体験してもらうために、下絵地図として"美々牧野"と"南千歳"のOCADファイルを置きますので試してみて下さい。


初版:2015年11月21日 最終更新:2015年11月24日